Fさん(82歳、女性)は、娘夫婦や孫と暮らしていた。もともと穏やかな性格であったが、1年前に夫を亡くしてからは、ふさぎ込むことが多くなった。半年前に自宅で転倒して大腿骨を骨折した。それ以来、自立歩行ができなくなり、介護老人福祉施設に入所した。その後、周囲の人に「死にたい」と、もらすようになった。
Fさんの精神状態として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1:不安神経症(anxiety neurosis)
2:ストレス反応(stress reaction)
3:認知症(dementia)
4:恐怖症(phobia)
5:抑うつ状態(depressive state)
答:5
1:誤り。不安神経症では、漠然とした恐れがさまざまな身体症状を伴って現れる。設問からはFさんが不安神経症とは判断できない。
2:誤り。ストレス反応には、心理面の反応(不安、イライラ、抑うつ、無気力など)、身体面の反応(頭痛、発熱、動悸、息切れ、胃痛、食欲低下、便秘や下痢、不眠など)、行動面の反応(飲酒量や喫煙量の増加、攻撃的行動、過食など)がある。設問からはFさんの精神状態としてストレス反応が最も適切とは判断できない。
3:誤り。認知症の中核症状には、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下などがある。設問からはFさんが認知症とは判断できない。
4:誤り。恐怖症とは、特定のものに対して異常な恐怖心や拒絶反応を起こす症状である。設問からはFさんが恐怖症とは判断できない。
5:正しい。Fさんは夫の死去や環境の変化を経験することで精神的に落ち込み、抑うつ状態にあると考えられる。