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R3-CBT-問30

運行管理者が次の事業用普通トラックの事故報告に基づき、この事故の要因分析を行ったうえで、同種事故の再発を防止するための対策として、【最も直接的に有効と考えられる組合せを、下の選択肢(1~8)から1つ】選びなさい。なお、解答にあたっては、<事故の概要>及び<事故関連情報>に記載されている事項以外は考慮しないものとする。

<事故の概要>
当該トラックは、17時頃、霧で見通しの悪い高速道路を走行中、居眠り運転により渋滞車列の最後尾にいた乗用車に追突した。当該トラックは当該乗用車を中央分離帯に押し出したのち、前方の乗用車3台に次々と追突し、通行帯上に停止した。
この事故により、最初に追突された乗用車に乗車していた3人が死亡し、当該トラックの運転者を含む7人が重軽傷を負った。当時霧のため当該道路の最高速度は時速50キロメートルに制限されていたが、当該トラックは追突直前には時速80キロメートルで走行していた。

<事故関連情報>
○当該運転者は、事故日前日運行先に積雪があり、帰庫時間が5時間程度遅くなって業務を早朝5時に終了した。その後、事故当日の正午に乗務前点呼を受け出庫した。
○当該運転者は、事故日前1ヵ月間の勤務において、拘束時間及び休息期間について複数回の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下「改善基準告示」という。)違反があった。
○当該運転者に対する乗務前点呼はアルコール検知器を使用し対面で行われていたが、睡眠不足等の運転者の体調確認は行われていなかった。
○当該営業所では、年度ごとの教育計画に基づき、所長自ら月1回ミーティングを実施していたが、交通事故を惹起した場合の社会的影響の大きさや、疲労などの生理的要因による交通事故の危険性などについて理解させる指導・教育が不足していた。
○当該運転者は、採用後2年が経過していたが、初任運転者に対する適性診断を受診していなかった。
○当該事業者は、年2回の定期健康診断の実施計画に基づき実施しており、当該運転者は、これらの定期健康診断を受診していた。
○当該トラックは、法令で定められた日常点検及び定期点検を実施していた。また、速度抑制装置(スピードリミッター)が取り付けられていた。

<事故の再発防止対策>
ア 運行管理者は、運転者に対して、法定速度を遵守させるとともに、交通事故を惹起した場合の社会的影響の大きさや過労が運転に及ぼす危険性を認識させ、疲労や眠気を感じた場合は直ちに運転を中止し、休憩するよう指導を徹底する。

イ 事業者は、点呼の際に点呼実施者が不在にならないよう、適正な数の運行管理者又は補助者を配置するなど、運行管理を適切に実施するための体制を整備する。

ウ 運行管理者は、関係法令及び改善基準告示に違反しないよう、日頃から運転者の運行状況を確実に把握し、適切な乗務割を作成する。また、運転者に対しては、点呼の際適切な運行指示を行う。

エ 事業者は、自社の事業用自動車に衝突被害軽減ブレーキ装置の導入を促進する。その際、運転者に対し、当該装置の性能限界を正しく理解させ、装置に頼り過ぎた運転とならないように指導を行う。

オ 事業者は、運転者に対して、疾病が交通事故の要因となるおそれがあることを正しく理解させ、定期的な健康診断結果に基づき、自ら生活習慣の改善を図るなど、適切な心身の健康管理を行うことの重要性を理解させる。

カ 法令で定められた日常点検及び定期点検整備を確実に実施する。その際、速度抑制装置の正常な作動についても、警告灯により確認する。

キ 運行管理者は、点呼を実施する際、運転者の体調や疲労の蓄積などをきちんと確認し、疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、当該運転者を交替させる措置をとる。

ク 運行管理者は、法に定められた適性診断を、運転者に確実に受診させるとともに、その結果を活用し、個々の運転者の特性に応じた指導を行う。

1:ア・イ・エ・オ

2:ア・イ・カ・キ

3:ア・ウ・エ・キ

4:ア・ウ・オ・カ

5:イ・エ・キ・ク

6:イ・エ・カ・ク

7:ウ・オ・キ・ク

8:ウ・オ・カ・ク

答:3

ア 正しい。当該トラックは法定速度を超えた速度で走行していた。また、当該営業所では、年度ごとの教育計画に基づき、所長自ら月1回ミーティングを実施していたが、交通事故を惹起した場合の社会的影響の大きさや、疲労などの生理的要因による交通事故の危険性などについて理解させる指導・教育が不足していた。よって、運転者に対して、法定速度を遵守させるとともに、交通事故を惹起した場合の社会的影響の大きさや過労が運転に及ぼす危険性を認識させ、疲労や眠気を感じた場合は直ちに運転を中止し、休憩するよう指導を徹底することは、同種事故の再発防止策として直接的に有効である。

イ 誤り。当該運転者に対しては、乗務前点呼が行われていた。よって、点呼の際に点呼実施者が不在にならないよう、適正な数の運行管理者又は補助者を配置するなど、運行管理を適切に実施するための体制を整備することは、同種事故の再発防止策として直接的に有効とはいえない。

ウ 正しい。事故は居眠り運転によるもので、当該運転者は休息期間を8時間とることができていなかった。また、事故日前1ヵ月間の勤務において、拘束時間及び休息期間について複数回の改善基準告示違反があった。よって、運行管理者は、関係法令及び改善基準告示に違反しないよう、日頃から運転者の運行状況を確実に把握し、適切な乗務割を作成すること、また、運転者に対しては、点呼の際適切な運行指示を行うことが、同種事故の再発防止策として直接的に有効である。

エ 正しい。事故は追突によるものであった。よって、事業用自動車に衝突被害軽減ブレーキ装置の導入を促進することは、同種事故の再発防止策として直接的に有効である。その際には、運転者に対し、当該装置の性能限界を正しく理解させ、装置に頼り過ぎた運転とならないように指導を行うことが重要である。

オ 誤り。事故は運転者の疾病によるものではなく、また当該事業者は、年2回の定期健康診断の実施計画に基づき実施しており、当該運転者は、これらの定期健康診断を受診していた。よって、運転者に対して、疾病が交通事故の要因となるおそれがあることを正しく理解させ、定期的な健康診断結果に基づき、自ら生活習慣の改善を図るなど、適切な心身の健康管理を行うことの重要性を理解させることが、同種事故の再発防止策として直接的に有効とはいえない。

カ 誤り。当該トラックは、法令で定められた日常点検及び定期点検を実施していた。よって、法令で定められた日常点検及び定期点検整備を確実に実施し、その際に、速度抑制装置の正常な作動についても、警告灯により確認することが、同種事故の再発防止策として直接的に有効とはいえない。

キ 正しい。事故は居眠り運転によるもので、当該運転者は休息期間を8時間とることができていなかった。よって、点呼を実施する際、運転者の体調や疲労の蓄積などをきちんと確認し、疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、当該運転者を交替させる措置をとることが、同種事故の再発防止策として直接的に有効である。

ク 誤り。当該運転者は、初任運転者に対する適性診断を受診していなかったが、これが原因の事故とはいえない。よって、法に定められた適性診断を、運転者に確実に受診させるとともに、その結果を活用し、個々の運転者の特性に応じた指導を行うことが、同種事故の再発防止策として直接的に有効とはいえない。

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