【法令】貯蔵・移動・充填容器
貯蔵と移動では、アンモニアとフルオロカーボンがよく出ますが、基本的に高圧ガスの種類は問われず、不活性のフルオロカーボンであっても適用されます(フルオロカーボンは適用されないとする誤り出題が多い)。
ただし、一部規定においては取扱いが異なるのでしっかり把握しましょう。
以下、充填容器及び残ガス容器を「充填容器等」とします。
貯蔵(法第15条)
容器による貯蔵の方法に係る技術上の基準(一般則第6条第2項第8号、第18条第2号、第19条)が問われます。
- 充填容器等の区分(一般則第6条第2項第8号イ)
- 充填容器等の温度(一般則第6条第2項第8号ホ)
- 充填容器等への衝撃等の防止措置(一般則第6条第2項第8号ト)
- 容器置場への燈火携行(一般則第6条第2項第8号チ)
- 貯蔵する場合の通風(一般則第18条第2号イ)
- 車両への積載(一般則第18条第2号ホ)
- 規制対象となる高圧ガスの容積・質量(一般則第19条)
- 規制対象となる高圧ガスの種類
直近10年の出題傾向
区分 | 温度 | 衝撃防止 | 燈火携行 | 通風 | 車両 | 容積質量 | 種類 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
令和5年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
令和4年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
令和3年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
令和2年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
令和元年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
平成30年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
平成29年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
平成28年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
平成27年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
平成26年度 | 〇 | 〇 | 〇 |
貯蔵の方法に係る技術上の基準のポイント
- 充填容器等の区分
-
充填容器等は、それぞれ区分して容器置場に置かなければなりません。フルオロカーボンに適用されないとする出題は誤りです。
- 充填容器等の温度
-
充填容器等は、いずれも常に温度40度以下に保たなければなりません。フルオロカーボンに適用されないとする出題、残ガス容器には適用されないとする出題は誤りです。
- 充填容器等への衝撃等の防止
-
内容積が5リットルを超える充填容器等には、転落、転倒等による衝撃及びバルブの損傷を防止する措置を講じ、かつ、粗暴な取扱いをしないことが定められています。
- 容器置場への燈火携行
-
可燃性ガスの容器置場には、携帯電燈以外の燈火を携えて立ち入ってはなりません。出題頻度は低く、過去問は液化アンモニアしか出題がありませんが、可燃性ガス以外で出題されたときに適用されないので要注意です。
- 貯蔵する場合の通風
-
可燃性ガス又は毒性ガスを充填した充填容器等を貯蔵する場合、通風の良い場所でしなければなりません。この規定は、不活性ガスには適用されませんので、不活性のフルオロカーボンで出題されたときは正誤を間違えないように要注意です。
通風の出題例(正)
アンモニアの充填容器等を貯蔵する場合は、通風の良い場所で行わなければならないが、不活性ガスのフルオロカーボンについては、その定めはない。
⇒ 他の規制では誤りになる出題パターンだが、通風の場合は正しい - 車両への積載
-
特に定められている場合を除き、充填容器等を車両に固定、又は積載して貯蔵することは禁じられています。フルオロカーボンに適用されないとする出題は誤りです。
- 規制対象となる高圧ガスの容積・質量
-
技術上の基準が適用される対象は、容積なら0.15m3、質量なら1.5kgを超える場合です。フルオロカーボンでも同様です。
- 規制対象となる高圧ガスの種類
-
令和3年度に「技術上の基準に従うべき高圧ガスは、可燃性ガス及び毒性ガスの2種類に限られている」とする誤りが出題されました。ガスの種類が定められている個別規定はありますが、技術上の基準全体としてはガスの種類を限定していません。
移動(法第23条)
車両に積載した容器を移動する場合の保安上必要な措置及び技術上の基準(一般則第50条)が問われます。
内容積による除外規定(内容積25リットル以下のみで合計50リットル以下)が複数ありますが、出題の前提は「内容積48リットルのもの」となっており、内容積による除外規定を意識する必要はありません。
- 警戒標の掲示(一般則第50条第1号)
- 充填容器等への衝撃等の防止措置(一般則第50条第5号)
- 毒性ガスの漏えい防止(一般則第50条第8号)
- 消火設備等の携行(一般則第50条第9号)
- 保護具等の携行(一般則第50条第10号)
- 書面の交付と携帯(一般則第50条第14号による第49条第1項第21号の準用)
- 規制対象となる高圧ガスの種類
直近10年の出題傾向
警戒標 | 衝撃防止 | 漏えい防止 | 消火設備 | 保護具 | 書面交付 | 種類 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
令和5年度 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
令和4年度 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
令和3年度 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
令和2年度 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
令和元年度 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
平成30年度 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
平成29年度 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
平成28年度 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
平成27年度 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
平成26年度 | 〇 | 〇 | 〇 |
※アンモニアの場合で、消火設備等の携行と保護具等の携行がセットの出題は、両方を「〇」としている
移動の方法に係る保安上の措置及び技術上の基準のポイント
以降、内容積25リットル以下のみで合計50リットル以下の除外規定は「内容積の除外規定」とします。
- 警戒標の掲示
-
充填容器等を車両に積載して移動するときは、車両の見やすい箇所に警戒標を掲げなければなりません。フルオロカーボンを含め、ガスの種類によって適用されないとする出題は誤りです。
※毒性ガス以外には、内容積の除外規定があります。 - 充填容器等への衝撃等の防止措置
-
内容積が5リットルを超える充填容器等には、転落、転倒等による衝撃及びバルブの損傷を防止する措置を講じ、かつ、粗暴な取扱いをしないことが定められています。フルオロカーボンに適用されないとする出題は誤りです。
- 毒性ガスの漏えい防止
-
毒性ガスの充填容器等には、木枠又はパッキンを施さなければなりません。過去問ではアンモニアのみ出題されていますが、アンモニア以外の毒性ガスも同様です。
- 消火設備等の携行
-
可燃性ガス、特定不活性ガス、酸素又は三フッ化窒素の充填容器等を車両に積載して移動するときは、消火設備並びに災害発生防止のための応急措置に必要な資材及び工具等を携行しなければなりません。
※内容積の除外規定があります。 - 保護具等の携行
-
毒性ガスの充填容器等を車両に積載して移動するときは、毒性ガスの種類に応じた防毒マスク、手袋その他の保護具並びに災害発生防止のための応急措置に必要な資材、薬剤及び工具等を携行しなければなりません。残ガス容器には適用されないとする出題は誤りです。
注意
アンモニアは、可燃性ガス及び毒性ガスであるため、消火設備等と保護具等をどちらも携行しなければなりません。ただし、両方がセットで出題されやすいです。
- 書面の交付と携帯
-
可燃性ガス、毒性ガス、特定不活性ガス又は酸素の高圧ガスを移動するときは、高圧ガスの名称、性状及び移動中の災害防止のために必要な注意事項を記載した書面を運転者に交付し、移動中携帯させ、これを遵守させなければなりません。
※毒性ガス以外で、注意事項を示したラベルが貼付されているものには、内容積の除外規定があります。 - 規制対象となる高圧ガスの種類
-
令和3年度に「不活性ガスである液化フルオロカーボンを移動するときは、移動に係る技術上の基準等の適用を受けない」とする誤りが出題されました。ガスの種類が定められている個別規定はありますが、保安上の措置及び技術上の基準全体としてはガスの種類を限定していません。
充填容器(法第48条)
充填容器は、容器保安規則に細かく規定されていますが、その全てが出題されるわけではありません。
- 容器に刻印すべき事項(法第45条第1項、容器則第8条第1項)
- 容器の塗色と表示(法第46条第1項、容器則第10条第1項、第2項)
- 充填できる液化ガスの質量(法第48条第4項、容器則第22条)
- 容器再検査の期間(法第48条第5項、容器則第24条)
- 附属品の刻印と再検査(法第49条の3、第49条の4)
- くず化その他の処分(法第56条)
直近10年の出題傾向
刻印(容) | 表示 | 質量 | 再検査 | 刻印(附) | くず化 | |
---|---|---|---|---|---|---|
令和5年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
令和4年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
令和3年度 | 〇 | ◎ | ||||
令和2年度 | ◎ | 〇 | ||||
令和元年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
平成30年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
平成29年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
平成28年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
平成27年度 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
平成26年度 | 〇 | 〇 | 〇 |
※「刻印(容)」は容器、「刻印(附)」は附属品
※「◎」は同年度に2つ出題
充填容器のポイント
- 容器に刻印すべき事項
-
容器規則第8条第1項には数多くの規定がありますが、過去問で出題されているのは、充塡すべき高圧ガスの種類(第3号)、容器の記号及び番号(第5号)、内容積(第6号)、容器検査に合格した年月(第9号)、圧縮ガスにおける最高充填圧力(第12号)です。次回の容器再検査の年月は誤りです。
その詳細まで問われることはほとんどありませんが、平成23年度に「FP14.7M」の示す意味(最高充填圧力14.7メガパスカル)が出題されたこともあり、条文をしっかり読んでおくに越したことはありません。
- 容器の塗色と表示
-
毎年出題されている重要分野。塗色、高圧ガスの名称、性質を示す文字(可燃性ガスは「燃」、毒性ガスは「毒」)が高頻度で出ます。
酸素ガス水素ガス 燃液化炭酸ガス液化アンモニア 燃 毒液化塩素 毒アセチレンガス 燃その他の種類特に、液化アンモニア(塗色は白、「燃」「毒」)の出題が多いので必ず覚えるべきです。なお、文字の色にも規定はありますが出題されたことはありません。
また、表示すべきき所有者の氏名等について、変更時の対応が平成24年度に出ています。氏名等の変更時は「遅滞なく」表示を変更しなければならないので押さえておきましょう。
- 充填できる液化ガスの質量
-
法第48条第4項、容器則第22条により、充填できる液化ガスの質量は、次の算式で求められる値以下でなければなりません。液化ガス別の定数は容器則第22条で定められています。
液化ガスの質量(kg)=内容積(L)液化ガス別の定数
つまり、充填できる液化ガスの質量は、内容積と液化ガスの種類によって変わるのですが、過去問では、次のように出題されています。
- 正:容器の内容積を容器保安規則で定められた数値で除して得られた質量以下
- 正:容器の内容積に応じて計算した質量以下
- 正:所定の算式で計算した質量以下
- 誤:最大充てん質量の数値以下
- 容器再検査の期間
-
令和5年度は5年ぶりに出題されました。溶接容器の容器再検査の期間は、容器の製造後の経過年数に応じて定められています。「製造後の経過年数に関係なく」は誤りです。経過年数20年未満のものは5年、経過年数20年以上のものは2年ですが、年数まで問われたケースはありません(令和5年度まで)。
- 附属品の刻印と再検査
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平成28年度に附属品(バルブ)の刻印が出題されています。附属品が、附属品検査・附属品再検査に合格したときは刻印しなければなりません。
- くず化その他の処分
-
令和に入って出題されるようになったので要注意です。容器又は附属品を廃棄するときは、くず化しなければなりません(物理的に再使用できないように処置する)。また、検査・再検査に不合格の容器・附属品も同様です。くず化せず「使用禁止」である旨の表示は誤りです。