【保安】安全装置

安全装置の問題では、安全弁、溶栓、破裂板、高圧遮断装置、ガス漏えい検知警報設備に加えて、液封事故の原因と防止について出題されます。

直近10年の出題傾向

安全弁 溶栓 破裂板 高圧遮断 漏えい検知 液封事故
令和5年度
令和4年度
令和3年度
令和2年度
令和元年度
平成30年度
平成29年度
平成28年度
平成27年度
平成26年度

※「◎」は同年度に2つ出題

このように、安全装置では毎年出題されている安全弁の攻略が第一です。

安全弁

出題数が多いだけあって、安全弁は問われる内容も種類が多くて面倒ですが頑張りましょう。

  • 圧縮機の安全弁の最小口径
  • 圧力容器の安全弁の最小口径
  • 安全弁の作動圧力
  • 安全弁の各部のガス通路面積
  • 安全弁の止め弁
圧縮機の安全弁の最小口径

圧縮機の安全弁の最小口径(\(d_1\))は、次の算式で求められます。

\(d_1=C_1\sqrt{V_1}\)

\(C_1\):冷媒の種類に応じた定数
\(V_1\):ピストン押しのけ量

実際には、もっと細かく規定されている(冷媒の種類によって定数ではなく算式を使う場合がある)のですが、試験では上記の算式に基づいて出題されています。

したがって、最小口径は冷媒の種類に応じた定数と、ピストン押しのけ量の平方根との積です。

誤りパターンの例

  • ピストン押しのけ量の平方根を冷媒の種類により定められた定数で除して
    ⇒ 除してではなく「乗じて」
  • ピストン押しのけ量の平方根に反比例
    ⇒ 反比例ではなく「正比例」
  • ピストン押しのけ量の立方根に正比例
    ⇒ 立方根ではなく「平方根」
  • 冷凍装置の冷凍能力に応じて定められている
    ⇒ 冷凍能力ではない
圧力容器の安全弁の最小口径

圧力容器の安全弁の最小口径(\(d_3\))は、次の算式で求められます。

\(d_3=C_3\sqrt{DL}\)

\(C_3\):冷媒の種類に応じた定数
\(D\):容器の外径
\(L\):容器の長さ

圧縮機の安全弁と同様に、圧力容器の安全弁でも細かく規定されている(冷媒の種類によって定数ではなく算式を使う場合がある)のですが、試験では上記の算式に基づいて出題されています。

また、圧力容器の安全弁では、冷媒の種類に応じた定数が、高圧部と低圧部に分けて定められており、多くの冷媒では低圧部のほうが大きい値になっています。

したがって、最小口径は冷媒の種類に応じて高圧部と低圧部に分けて定められた定数と、容器の外径と長さの積の平方根との積です(ざっくり言うと容器の大きさに関係する)。

誤りパターンの例

  • 容器の内径と長さの積の平方根
    ⇒ 容器の内径ではなく「外径」
  • 容器の外径と長さの和の平方根
    ⇒ 和ではなく「積」
  • 冷媒の種類に依存しない
    ⇒ 冷媒の種類に応じて高圧部と低圧部に分けて定められた定数を使用
  • 高圧部と低圧部によって異なり、多くの冷媒では高圧部のほうが大きい
    ⇒ 冷媒の種類に応じた定数は多くの冷媒で低圧部のほうが大きいため、最小口径は「低圧部」のほうが大きくなる

なお、圧縮容器では平方根を「立方根」、積(乗じて)を「除して」といった引っかけ問題は見当たりませんが、当然にそのような細かい引っかけをしてくる可能性は考慮しておくべきです。

安全弁の作動圧力
  • 安全弁の作動圧力とは、吹始め圧力と吹出し圧力のことで、許容圧力を基準として定められる

実際には、圧縮機の安全弁と容器の安全弁で基準は異なりますが、細かいところまでは出題されておらず、基本事項として上記を覚えておけば対応できるはずです。

安全弁の各部のガス通路面積
  • 安全弁の各部のガス通路面積は、安全弁の口径面積以上でなければならない
  • 作動圧力を設定した後、封印できる構造でなければならない

出題は少なく、誤りも確認できていません。安全弁の口径面積以上でなければならない要件は、「安全弁の口径面積より小さくしてはならない」として出題されています。

安全弁の止め弁
  • 安全弁の止め弁は、検査・修理等を除き、常に開いておかなければならない

安全弁の止め弁は、常に開いておくのが原則です。止めてしまうなら安全弁を設ける意味がない……。

法令科目(製造の方法に係る技術上の基準)でも安全弁の止め弁は出てきますが、とにかく安全弁の止め弁=原則常時開放と覚えてしまうのがいいでしょう。

溶栓

安全弁に次いで溶栓もよく出題されます。出題はバラエティに富んでいて、なかなか手ごわいです。

  • 温度を検知して溶融し、内部の冷媒は大気圧になるまで放出される
  • 溶解温度は75℃以下(例外あり)
  • 口径は圧力容器における安全弁の最小口径の1/2以上
  • 可燃性ガス及び毒性ガスには使用できない
  • 圧縮機の吐出しガスで加熱される部分、水冷凝縮器の冷却水で冷却される部分など、正しい冷媒ガスの温度を検知できない場所には使用できない

仕組みや使用制限は理解しやすいですが、あまり出題されない溶融温度や口径に注意です。

誤りパターンの例

  • 圧力を感知して冷媒を放出する
    ⇒ 圧力ではなく「温度」
  • 100℃の高温吹出しガスにさらされても問題ない
    ⇒ 75℃を超えると溶融して冷媒ガスが放出されてしまう
  • 温度の低下とともに閉止
    ⇒ 溶栓が作動(溶融)すると内部の冷媒は大気圧になるまで放出され続ける
  • すべての冷凍装置に使用できる
    ⇒ 可燃性ガス及び毒性ガスには使用できない
  • 口径は、容器の外径と長さの積の平方根と、冷媒毎に定められた定数の積で求められた値の1/2以下
    ⇒ 1/2以上
  • 高温の圧縮機吐出しガスで加熱される部分に取り付ける
    ⇒ 圧縮機の吐出しガスで加熱される部分には使用できない

破裂板

破裂板は構造が単純で、難しい問題にはならないのですが、残念ながら出題頻度は低いです。

  • 圧力の異常な上昇(破裂圧力以上)で破裂し、内部の冷媒は大気圧になるまで放出される
  • 比較的高い圧力の装置には使用しない
  • 可燃性ガス及び毒性ガスには使用できない
  • 破裂圧力は安全弁の作動圧力以上、耐圧試験圧力以下
  • 長期間経過すると破裂圧力が低下する傾向がある

破裂板は、作動(破裂)したら交換するしかありません。「圧力の低下とともに閉止」は誤りです。

高圧遮断装置

安全弁、溶栓、破裂板は作動時に冷媒を放出するのに対し、高圧遮断装置は圧縮機を止める安全装置です。

  • 高圧側の圧力の異常な上昇を検知して圧縮機を停止させる(電動機の電源を切る)
  • 原則として手動復帰式である
  • 作動圧力は、高圧部に取り付けられた安全弁の吹始め圧力の最低値以下、かつ、高圧部の許容圧力以下

理解しておきたいのは、安全弁の作動による冷媒ガスの噴出よりも早い段階で高圧遮断装置が作動することです(作動圧力が安全弁の吹始め圧力より低い)。

つまり、安全弁が作動するほどの異常な圧力上昇を未然に防ぐということですね。

誤りパターンの例

  • 低圧側圧力の異常な上昇を防止する
    ⇒ 低圧側ではなく「高圧側」
  • 作動圧力は圧縮機に取り付ける安全弁の作動圧力と同じ
    ⇒ 安全弁の吹始め圧力の最低値以下、かつ、許容圧力以下

ガス漏えい検知警報設備

名称から機能はわかりますので説明は省略します。製造施設に設置しなければならない安全装置です。

  • 可燃性ガス毒性ガス又は特定不活性ガスの製造施設に設置しなければならない(吸収式アンモニア冷凍機に係る施設を除く)

出題が少ないことと関係するのかもしれませんが、ガス漏えい検知警報設備については、幸いにも細かい規定は出題されていません。「冷媒の種類や機械換気装置の有無にかかわらず設置」は誤りです。

液封事故の原因と防止

容器や配管が液で満たされた状態のとき(逃げ場がないとき)、周囲の温度変化による熱膨張で高圧になり、配管等の破損・漏えいにつながるおそれがあり危険です。

問われるのは、液封による事故が発生しやすい場所と防止措置です。

  • 低圧液配管(二段圧縮冷凍装置の過冷却された液配管、冷媒液強制循環式冷凍装置の低圧受液器まわりの液配管)において発生することが多い
  • 弁操作ミスなどが原因になることが多い
  • 液封の起こるおそれのある部分(銅管および外径26mm未満の鋼管を除く)には、安全弁破裂板または圧力逃がし装置を取り付けなければならない

頻出ポイントとして、液封防止に溶栓は使用できないことを必ず覚えておきましょう。

誤りパターンの例

  • 高温高圧になる液配管で発生する
    ⇒ 「低圧液配管」で発生する
  • 溶栓、安全弁、破裂板または圧力逃がし装置を取り付ける必要がある
    ⇒ 溶栓はNG
  • 破裂板以外の安全弁または圧力逃がし装置を取り付ける必要がある
    ⇒ 破裂板はOK