【法令】冷凍能力の算定基準

冷凍能力の算定基準は毎年1問出題され、算定に必要な数値が問われます。しかし、冷凍則第5条は見るだけで嫌になる(覚える気になれない)規定なので、なかなかハードルの高い設問です。

規定されている製造設備を整理すると次のようになります。

  • 遠心式圧縮機を使用する製造設備(冷凍則第5条第1号)
  • 吸収式冷凍設備(冷凍則第5条第2号)
  • 自然環流式冷凍設備及び自然循環式冷凍設備(冷凍則第5条第3号)
  • 遠心式圧縮機以外の圧縮機を使用する製造設備(冷凍則第5条第4号)
    • 多段圧縮方式又は多元冷凍方式による製造設備
    • 回転ピストン型圧縮機による製造設備
    • その他の製造設備

このうち、「自然環流式冷凍設備及び自然循環式冷凍設備」と「多段圧縮方式又は多元冷凍方式による製造設備」は直接の出題がありません(令和5年度まで)。

ただし、少なくとも「自然環流式冷凍設備及び自然循環式冷凍設備」は、算式を覚えておく必要があります(詳細は後述)。

直近10年の出題傾向

遠心式 吸収式 遠心式以外の圧縮機
指定なし 往復動式 回転ピストン型
令和5年度
令和4年度
令和3年度
令和2年度
令和元年度
平成30年度
平成29年度
平成28年度
平成27年度
平成26年度

※令和5年度の「混」は、遠心式・吸収式以外として「自然環流式冷凍設備及び自然循環式冷凍設備」も対象に入っている

※「◎」は同年度に2つ出題、「単」は該当製造設備単体(3つ)の出題

遠心式圧縮機(冷凍則第5条第1号)

高頻度で出題され、しかも単純なサービス問題。キーワードは原動機、定格出力

圧縮機の原動機の定格出力1.2キロワットをもって1日の冷凍能力1トンとする

  • 誤:蒸発器の1時間当たりの入熱量の数値
    ⇒ 規定されていない
  • 誤:圧縮機の標準回転速度における1時間のピストン押しのけ量の数値(V)
    ⇒ 遠心式圧縮機以外の圧縮機

吸収式冷凍設備(冷凍則第5条第2号)

出題頻度は遠心式圧縮機ほどではありませんが、こちらも単純で覚えやすい。キーワードは発生器、入熱量

発生器を加熱する1時間の入熱量27,800キロジュールをもって1日の冷凍能力1トンとする

  • 誤:(蒸発部又は)蒸発器の冷媒ガスに接する側の表面積の数値
    ⇒ 自然環流式冷凍設備及び自然循環式冷凍設備

※()内は無い場合あり

自然環流式冷凍設備及び自然循環式冷凍設備(冷凍則第5条第3号)

直接の出題がないにもかかわらず、算式を覚えなくてはならないのは、算式の一部が他の製造設備に必要な数値として(誤りとして)出題されるからです。

また、令和5年度には、遠心式圧縮機・吸収式冷凍設備以外の製造設備として、事実上出題されています。

冷凍能力(t)=Q × A

Q:冷媒ガスの種類に応じて定められた数値
A:蒸発部又は蒸発器の冷媒ガスに接する側の表面積の数値(m2)

上記Aの値が他の製造設備で出題されやすい。キーワードは蒸発器、表面積

遠心式圧縮機以外(冷凍則第5条第4号)

多段圧縮方式又は多元冷凍方式による製造設備は、出題がないので省略します。

遠心式圧縮機以外の圧縮機とは、すなわち容積圧縮式の圧縮機を使用する製造設備を総称していますので、遠心式圧縮機以外での出題と、往復動式での出題を区別して考える必要はありません

キーワードはピストン押しのけ量、冷媒ガスの種類

冷凍能力(t)=V ÷ C

V:圧縮機の標準回転速度における1時間のピストン押しのけ量(m3)
C:冷媒ガスの種類に応じて定められた数値又は所定の算式により得られた数値

  • 誤:冷媒設備内の冷媒ガスの充填量の数値
    ⇒ 規定されていない
  • 誤:蒸発器の冷媒ガスに接する側の表面積の数値
    ⇒ 自然環流式冷凍設備及び自然循環式冷凍設備
  • 誤:発生器を加熱する1時間の入熱量の数値
    ⇒ 吸収式冷凍設備
  • 誤:圧縮機の原動機の定格出力の数値
    ⇒ 遠心式圧縮機

また、回転ピストン型圧縮機には要注意です。

回転ピストン型圧縮機の場合

容積圧縮式の中でも回転ピストン型圧縮機は、Vに「圧縮機の標準回転速度における1時間のピストン押しのけ量」ではなく、次の値が使われます。

V:60 × 0.785tn(D2-d2)

t:回転ピストンのガス圧縮部分の厚さの数値
n:回転ピストンの1分間の標準回転数の数値
D:気筒の内径の数値
d:ピストンの外径の数値

このうち、「気筒の内径の数値」が平成24年度に出題され、以降は出ていませんが、他も含め出る可能性があることは頭に入れておきましょう。

  • 誤:蒸発器の冷媒ガスに接する側の表面積の数値
    ⇒ 自然環流式冷凍設備及び自然循環式冷凍設備

冷凍能力の算定基準の攻略

過去問を周回しても覚えきれないと思いますので、製造設備とキーワードで早見表を作ってみました。

遠心式圧縮機 原動機、定格出力
吸収式冷凍設備 発生器、入熱量
自然環流式冷凍設備・自然循環式冷凍設備 蒸発器、表面積
遠心式圧縮機以外・往復動式 ピストン押しのけ量、冷媒ガスの種類
回転ピストン型圧縮機 ???、冷媒ガスの種類

前述のとおり、回転ピストン型圧縮機では、細かい部分から何が出るかわかりませんが、他の製造設備はキーワードとのマッチングで正誤を判断できます。

早見表が覚えられない人は……次のように対策する方法も考えられます。

製造設備が圧縮機を使用しているかチェック

まず、対象の製造設備をよく読んで、圧縮機を使用する製造設備かチェックします。

圧縮機を使用する製造設備では、冷凍能力に圧縮機がかかわりますので、〇〇器(発生器、蒸発器)に関係する数値は使われません。つまり、圧縮機+〇〇器という組み合わせは誤りです。

圧縮機を使用しない製造設備だったら

圧縮機を使用しない製造設備の場合、吸収式冷凍設備なら発生器、自然環流式冷凍設備・自然循環式冷凍設備なら蒸発器です。

しかし、過去問には吸収式冷凍設備しか出ておらず、吸収式冷凍設備=発生器だけでも覚えましょう。そうすれば、発生器が出てきた時点で、吸収式冷凍設備以外は誤りだとわかります。

規定にない用語を見つける

過去に数問しかありませんが、どの製造設備にも該当しないイレギュラーな用語が誤りとして出ています。

  • 誤:蒸発器の1時間当たりの入熱量(令和5年度、令和4年度)
  • 誤:冷媒ガスの充填量(令和4年度、令和2年度、平成30年度)

いずれも比較的最近の出題で、なぜこのような傾向になったのか不明です。令和4年度に至っては、規定にない用語が2つ出たので、必然的に残り1つが正しいとわかります。覚えておいて損はないでしょう。

ただ、上記の方法で対策するより、早見表を覚えるほうが楽かも……。