【保安】冷媒配管

冷媒配管の問題では、配管の基礎事項、配管材料、管継手、高圧液配管、圧縮機の吸込み配管と吐出し配管が出題されています。

直近10年の出題傾向

基礎事項 材料 管継手 高圧液配管 吸込み 吐出し
令和5年度
令和4年度
令和3年度
令和2年度
令和元年度
平成30年度
平成29年度
平成28年度
平成27年度
平成26年度

※「◎」は同年度に2つ出題

毎年出ている高圧液配管と圧縮機の吸込み配管はともかく、圧縮機の吐出し配管が続けて出た後にしばらく空いているのが気になりますよね。

また、ごく一部ですが「これは無理だろ」と思わせる出題があって、全体的には難易度高めです。

配管の基礎事項

直近では配管と流れ抵抗の出題が続いています。

  • 冷媒の流れ抵抗は極力小さくする(圧力降下で状態変化する可能性があるため)
  • 配管は内径が小さい(細い)ほど流れ抵抗が大きくなる
  • 配管の曲がりは流れ抵抗を大きくし、曲がりの半径が小さいほど流れ抵抗は大きくなる

上記は、あくまでも基礎的な知識としてとらえてください。流れ抵抗を小さくするためには、より太く、より真っすぐな配管となりますが、そう簡単にはいきません。

冷媒の状態をコントロールしながら循環させる冷凍設備の特性上、配管内を流れる冷媒の状態や流速も関係するからです。場所によって適切な配管形状や管径は決まっています。

  • 横走り管には下り勾配を付ける(1/150~1/250)
  • 不必要なUトラップは付けない

その他、十分な耐圧と気密の性能を確保すること、配管周囲の温度変化に影響を受けないようにすること、法令等の規定に適合していることなど、常識的な留意事項は頭に入れておきましょう。

配管材料

前提として、配管材料は冷媒と冷凍機油の化学的作用によって劣化しないことが重要です。

冷媒の種類による違いと、配管用炭素鋼鋼管(SGP)が主に出題されます。

冷媒の種類による違い

冷媒によって使用できない材料が定められています。

冷媒 使用できない配管材料
アンモニア 銅および銅合金(よく出る)
フルオロカーボン 2%を超えるマグネシウムを含有したアルミニウム合金
誤りパターンの例

  • フルオロカーボン冷媒、アンモニア冷媒の配管に銅および銅合金を使用
    ⇒ アンモニアに銅および銅合金は不可
  • アンモニア冷媒配管に真ちゅう製のバルブ
    真ちゅうは銅合金なので不可(これは正解させる気がなかったと思われる)
配管用炭素鋼鋼管(SGP)

問われるのは、SGPが使用できる温度と冷媒です。

  • 低温は-25℃まで使用できる
  • 毒性をもつ冷媒、設計圧力が1Mpaを超える耐圧部分、温度が100℃を超える耐圧部分に使用できない
誤りパターンの例

  • 低温用の冷媒配管として-30℃で使用
    ⇒ 低温使用は-25℃まで
  • 設計圧力が1.6MPaのフルオロカーボン冷媒配管に使用
    ⇒ 1Mpaを超えているので不可

注意

過去問に「R410Aの高圧冷媒配管に使用」の出題があり、R410Aの高圧部設計圧力は1Mpaを超えるため誤りですが、こちらも正解させる気がなかったと思われます。

冷媒別の設計圧力を全て覚えるのは難易度が高すぎますし、その前提で出題してくるはずもないので、過去に出題されたR410Aだけは覚えておきましょう。

ちなみに、関係団体(日本冷凍空調学会を含む)でとりまとめた公表標準値によれば、R410Aの高圧部設計圧力は、基準凝縮温度43℃で2.50MPa、基準凝縮温度65℃で4.17MPaです。

管継手

管継手では、フルオロカーボン冷媒の銅配管接続と、ろう付けが出題されています。

  • フルオロカーボン冷凍装置に使用する銅配管(小口径)の接続には、一般にフレア継手ろう付け継手を用いることが多い
  • ろう付け作業は、配管内に酸化皮膜が生じないように窒素ガスを流す(窒素ブロー)

出題が少ないため、時間をかけてまで本格的に学習するのはコストとの釣り合いが難しいのですが、ろう付けがどのようなものか知っておくのは無駄にならないかもしれません。

【ろう付け】

接合したい母材(配管・継手)よりも低い溶融点の金属(ろう材)を、接合部で溶かして母材同士を接合する方法。母材を溶かして接合する溶接とは異なり、ろう付けでは母材がほぼ溶けない。ろう材には、銀ろう、黄銅ろう、りん銅ろうなどが用いられる。

高圧液配管

高圧液配管(凝縮器~高圧受液器~膨張弁)では、ほとんどがフラッシュガスの発生に関する出題です。

  • フラッシュガスが発生すると、配管内の流れ抵抗は大きくなる(より発生しやすくなる)
  • フラッシュガスが発生すると、膨張弁の冷媒流量が減少して冷凍能力が減少する
  • 大きな立ち上がり部があると、高さによる圧力降下でフラッシュガスが発生しやすい
  • 冷媒液の流速は小さくなるような管径とする(流速1.5m/s以下)
誤りパターンの例

  • フラッシュガスが発生すると配管内の流れの抵抗が小さくなる
    ⇒ 流れの抵抗が「大きく」なる
  • フラッシュガスが発生すると膨張弁の冷媒流量が増加
    ⇒ 膨張弁の冷媒流量が「減少」
  • フラッシュガスが発生すると冷凍能力が増加
    ⇒ 冷凍能力が「減少」
  • 飽和温度以上に高圧液配管が温められてもフラッシュガスは発生しない
    ⇒ 飽和温度以上になるとフラッシュガスが発生する
  • 液圧が液温に相当する飽和圧力よりも上昇するとフラッシュガスが発生
    ⇒ 飽和圧力よりも「降下(低下)」するとフラッシュガスが発生
  • 立ち上がり部の高さによらずにフラッシュガスが発生する
    ⇒ 高低差が「大きいほど」フラッシュガスが発生しやすい
  • 流速ができるだけ大きくなるような管径とする
    ⇒ 流速ができるだけ「小さく」なるような管径とする

フラッシュガスは、配管内の冷媒液が一部気化して気泡が生じる現象ですが、その原因は冷媒量不足を除くと、①飽和温度以上に液温が上昇②液温相当の飽和圧力より液圧が低下の2つです。

よって、液温をなるべく上げない(もしくは下げる)、液圧をなるべく下げないという対策になります。

【フラッシュガス対策の例】

  • 高温となる場所に配管を通さない(液温を上げない)
  • 配管を断熱・防熱する(液温を上げない)
  • 液ガス熱交換器を通す(液温を下げる)
  • 配管の高低差を小さくする(液圧を下げない)
  • 配管を短くする(液圧を下げない)
  • 冷媒液の流速を下げる(液圧を下げない)
  • 弁やフィルタドライヤ等の附属品による流れ抵抗を減らす(液圧を下げない)

均圧管について

出題は少ないので、さっと流してください。

凝縮器の液流下管から高圧受液器へ冷媒液を流し落とす過程において、冷媒液が流下しにくくなるのを防ぐため、凝縮器と高圧受液器を均圧管で接続する方法があります。

他の方法としては、液流下管の管径を大きく(太く)することです。

圧縮機の吸込み配管

高圧液配管と並んで毎年出題されますが、出題内容は細かいので苦労するかもしれません。

防熱
  • 管表面の結露あるいは着霜を防止し、吸込み蒸気の温度上昇を防ぐために防熱する

吸込み蒸気の温度上昇は、吐出し蒸気の温度上昇となり、冷凍機油を劣化させ冷凍能力の低下にもなります。「防熱して吸込み蒸気温度の低下を防ぐ」は誤りです。

管径と蒸気速度
  • 冷媒蒸気中に混在した冷凍機油を、最小負荷時にも圧縮機に戻せる蒸気速度(横走り管:3.5m/s以上、立ち上がり管:6m/s以上)が確保できる管径にする
  • 過大な圧力降下(蒸気の飽和温度の2Kに相当する圧力を超える降下)が生じない程度の蒸気速度を上限として管径を決定する
  • 管径を小さくして蒸気速度を大きくすると、吸込み圧力は低下する

低負荷時の蒸気速度が遅いと、冷媒蒸気よりも重い冷凍機油が圧縮機に戻りきらず潤滑不良となり、その一方で、蒸気速度が速すぎると圧力降下や騒音が大きくなります(一般には20m/s以下とする)。

立ち上がり管

管径と蒸気速度の問題は、最小負荷と最大負荷の差(油戻しに必要な蒸気速度の差)が大きいほど深刻です。蒸気速度が遅すぎても速すぎても良くないからですね。

そこで、吸込み配管の立ち上がり管を二重(太さは異なる)にして、低負荷時と高負荷時のどちらでも適切な蒸気速度を確保できるようにする方法が採用されています。

  • 吸込み配管の二重立ち上がり管は、圧縮機への油戻しのために設置される
  • 吸込み配管の二重立ち上がり管は、最小負荷と最大負荷の両方で蒸気速度を適切な範囲内にできる
  • 吸込み管の立ち上がりが非常に長い場合には、油戻りをよくするために、約10mごとに中間トラップを設けることがある

二重立ち上がり管では「冷媒液の戻り防止」とする誤りが出題されやすいです。

横走り吸込み配管のUトラップ

横走り吸込み配管のUトラップ=液圧縮の危険と覚えましょう。

  • 横走り吸込み配管にUトラップがあると、溜まった液が圧縮機に吸い込まれて液圧縮の危険がある
  • 横走り吸込み配管では、特に圧縮機と近い場所のUトラップを避けるようにする

圧縮機の吐出し配管

圧縮機からは、冷媒ガスと一緒に冷凍機油が混在して吐き出されます。重要なポイントは、凝縮した冷媒液や冷凍機油の逆流防止です。

  • 冷媒ガス中に混在している冷凍機油が確実に運ばれるガス速度(横走り管:3.5m/s以上、立ち上がり管:6m/s以上)を確保できる管径にする
  • 過大な圧力降下や騒音を抑えるため、ガス速度は25m/s以下にする
  • 摩擦損失による圧力降下は20kPaを超えないようにする
  • 圧縮機の停止中に吐出し配管内で凝縮した冷媒液や冷凍機油が逆流しないように、凝縮器への接続は下がり勾配をつける

なお、吐出し配管と凝縮器との接続に下がり勾配をつける点ですが、実際の問題では「逆流しないようにすることが施工上重要」などの表現で出されることが多く、下がり勾配までは問われないかもしれません。

具体的には、圧縮機の物理的な位置が凝縮器よりも下にある場合、吐出し配管を凝縮器以上の高さまで立ち上げてから、下がり勾配で接続する工夫が必要です。