【保安】附属機器

附属機器の問題では、受液器(高圧・低圧)、油分離器、液分離器、熱交換器、フィルタドライヤ、サイトグラスが出題されています。

最低でも、各附属機器が系統のどこに設置されるのか把握しておくことに加え、その役割を知っておけばそれほど難しい出題はありません。

直近10年の出題傾向

受液器 油分離器 液分離器 熱交換器 ドライヤ サイトグラス
令和5年度
令和4年度
令和3年度
令和2年度
令和元年度
平成30年度
平成29年度
平成28年度
平成27年度
平成26年度

※「◎」は同年度に2つ出題

傾向として、受液器と油分離器はほぼ必須。近年はサイトグラスの出題が目立ちますが、簡単な機構の附属装置なので、むしろ出てほしいくらいでしょう。

受液器(レシーバ)

冷媒液を一時的に溜めておくための附属装置。誤りの出題は少ない傾向があり、基本の理解が重要です。

  • 受液器には、高圧受液器(単に受液器と呼ばれることが多い)と低圧受液器がある
  • 高圧受液器は凝縮器の出口側に連結する
  • 低圧受液器は冷却管内蒸発式の満液式蒸発器(冷媒液強制循環式)に連結する

高圧受液器

凝縮器で凝縮された高圧冷媒液を常に確保しており、運転状態の変化による冷媒液量の変動を吸収する、つまり、循環する冷媒量を安定させる役割があります。

冷媒液量の増加に備えて、受液器の液面より上(蒸気空間)には余裕がなければなりません。受液器出口から冷媒蒸気が流れ出ないように、液出口管端は液面よりも低い位置です。

また、冷媒設備を修理する際に、大気に開放する装置部分の冷媒を回収することができます。

低圧受液器

冷却管内蒸発式の満液式蒸発器(冷媒液強制循環式)で使用されるのが低圧受液器です。膨張弁で減圧された低圧冷媒液を溜めておきます。

冷媒液強制循環式では、低圧受液器から蒸発量よりも多い冷媒液を液ポンプで蒸発器に送りますが、蒸発しきれない液は低圧受液器に戻され循環します。

液ポンプが蒸気を吸い込まないように、液面レベル確保と液面位置の制御が必要です。

油分離器(オイルセパレータ)

圧縮機には潤滑用の油(冷凍機油)が不可欠です。ところが、冷凍機油は冷媒ガスと一緒に少しずつ吐き出されてしまいます。冷凍機油が不足すると圧縮機の潤滑不良を起こしますし、冷凍機油は凝縮器や蒸発器に送られると伝熱を妨げます。

そこで、圧縮機が吐き出した冷媒ガスから、冷凍機油をできるだけ分離するのが油分離器です。

  • 圧縮機の吐出し配管に取り付ける
  • 大形や低温用のフルオロカーボン冷凍装置、アンモニア冷凍装置に用いられることが多い
  • 小形のフルオロカーボン冷凍装置には設けないことが多い
  • アンモニア冷凍装置では、分離された冷凍機油(鉱油)を自動返油しない

よく出るのは、油分離器を取り付ける位置で、「圧縮機の吸込み蒸気配管」は誤りです。油分離器が何のために存在するのか、油がどこから出るのか理解していれば、吸込み配管と吐出し配管を間違えないでしょう。

他に出やすいのは、アンモニア冷凍装置における冷凍機油(鉱油)の扱いです。

フルオロカーボン冷凍装置では、油分離器にフロート弁を設け、溜まった油が一定以上になるとフロートを押し上げて弁が開き、圧縮機のクランクケースに自動返油される方式が採用されています。

一方で、アンモニア冷凍装置の冷凍機油に使用される鉱油は、高温の吐出しガスで劣化するため、一般には自動返油されません(油溜め器から抜き取られる)。「アンモニア冷凍装置+自動返油」は誤りです。

油分離器の種類について

令和2年度に「油滴を重力で落下させて分離するもの」が出題されました。出題頻度が低いので何とも言えませんが、一度でも出たからには警戒すべきでしょう。

油を分離する方法としては、次のようなものがあります。

遠心分離 旋回板を設けてガスを旋回させ、遠心力で油滴が内壁に付着
バッフル 小穴のあるじゃま板(バッフル板)にガスを通過させ、油滴が板に付着
金網 多重配置した円筒状の金網にガスを通過させ、油滴を金網で分離
デミスタ 金属線の層(デミスタ)にガスを通過させ、油滴を金属線で捕集
重力分離 ガスの通過速度を下げて、重力による油滴の落下を利用(令和2年度)

液分離器(アキュムレータ)

蒸発器から出た冷媒蒸気に冷媒液が混在していると、圧縮機へ吸い込まれて液圧縮が起こり圧縮機の損傷につながります。液分離器は、冷媒蒸気に混在した冷媒液を分離し、圧縮機を保護する附属装置です。

  • 圧縮機の吸込み配管に取り付ける
  • 容器内で蒸気速度を下げ(1m/s以下)、重い液滴を落下させて溜める
  • 小形のフルオロカーボン冷凍装置やヒートポンプ装置では、内部のU字管下部に設けられた小穴から少量ずつ液を圧縮機に吸い込ませるものがある

誤りパターンは少なく、「圧縮機の吐出し蒸気配管」「分離した液を冷凍装置外部に排出」は誤りです。

液ガス熱交換器

フルオロカーボン冷凍装置で使用される附属装置。液ガスの「液」とは凝縮器を出た高温(高圧)の冷媒液、「ガス」とは蒸発器を出た低温(低圧)の冷媒蒸気を意味します。

液ガス熱交換器は、高温の冷媒液と低温の冷媒蒸気の間で熱交換を行います。

  • 凝縮器を出た冷媒液を過冷却して、液管内でのフラッシュガスの発生を防止
  • 蒸発器を出た冷媒蒸気を適度に過熱して、湿った冷媒蒸気が圧縮機に吸い込まれるのを防止
  • アンモニア冷凍装置では使用されない

典型的な誤りパターンは2つです。「冷媒蒸気を冷却(過熱度を小さく)する」「アンモニア冷凍装置で使用」は誤りなので問題をよく読みましょう。

フィルタドライヤ

フルオロカーボン冷凍装置で、冷媒系統の水分を除去するため、冷媒液配管に取り付ける附属装置。ろ過機能がありフィルタドライヤと呼ばれますが、古い過去問では単に「ドライヤ」として出題されています。

  • 通常、アンモニア冷凍装置では使用されない
  • 乾燥剤には、水分を吸着しても化学変化を起こさないシリカゲルやゼオライトなどが用いられる

この2つを覚えておけばだいたい大丈夫です。他にあるとすれば、乾燥剤が砕けてドライヤから流出しないように、乾燥剤には砕けにくい特性も求められます。

サイトグラス

近年出題されるようになりました。サイトグラスとは、平たく言うと冷媒液配管の「のぞき窓」で、のぞきガラスから配管の中を見られるようにする附属装置です。

  • 冷媒充填量の不足やフィルタドライヤの交換時期などの判断に用いられる
  • モイスチャーインジケータが付いている(無いものもある)

冷媒充填量の不足は、のぞきガラスを通じて目視判断できますが、フィルタドライヤの交換時期の判断にはモイスチャーインジケータを利用します。

モイスチャーインジケータは、冷媒の水分含有量を色で示してくれる変色指示板で、冷媒の水分含有量が多い=フィルタドライヤの水分除去性能が落ちているということです。

したがって、サイトグラスはフィルタドライヤの下流(冷媒がフィルタドライヤを通過して水分除去された後)の冷媒液配管に設置されます。

令和2年度に「のぞきガラスのないモイスチャーインジケータだけのものもある」という誤りが出題されました。のぞきガラスがないと、そもそもサイトグラス(sight glass)ではないです。妙な出題ですね。