【関係法令】衛生管理体制
衛生管理者の選任
法令上、誤っているもの(定められていないもの、違反しているもの)を選択する出題形式が多いです。よく出題されるのは、①選任すべき人数と専任要件、②労働衛生コンサルタント、③業種と必要な資格です。
- ①選任すべき人数と専任要件
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常時使用する労働者数は250人~800人の設問が多いので、衛生管理者数が2人以上~4人以上となる要件は必ず覚えましょう。「選任している衛生管理者数が少ないことが違反」というパターンもあるので注意。
常時使用する労働者数 衛生管理者数 専任要件 50人以上~200人以下 1人以上 なし 200人超~500人以下 2人以上 500人超~1000人以下 3人以上 有害業務に常時30人以上で少なくとも1人専任 1000人超~2000人以下 4人以上 少なくとも1人専任 2000人超~3000人以下 5人以上 3000人超 6人以上 また、専任要件については、労働者数1000人超がほとんど出題されないため、事実上、常時500人超、かつ、有害業務に常時30人かどうかで判断しなければなりません。
★は出題歴あり
- 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務★
- 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務★
- ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
- 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
- 異常気圧下における業務
- 削岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務
- 重量物の取扱い等重激なる業務
- ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務★
- 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務★
- その他、厚生労働大臣の指定する業務
- ②労働衛生コンサルタント
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衛生管理者は、事業場に専属でなければなりませんが、2人以上の衛生管理者を選任する場合で、衛生管理者の中に労働衛生コンサルタントがいるとき、労働衛生コンサルタントのうち1人は事業場に専属でなくてもよい例外規定があります(安衛則第7条第1項第2号)。
専属でない労働衛生コンサルタントの出題では、選任されている(または選任すべき)衛生管理者の人数が、2人以上かどうか必ず確認しましょう。
- ③業種と必要な資格
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業種によって、衛生管理者に必要な資格は異なります。ただし、違いは「第二種衛生管理者免許保持者」を選任できるかどうかだけです。出題の多くは製造業ですが、製造業以外も時々出るので気を付けてください。
★は出題歴あり
業種 必要な資格 農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業★(鉄鋼業としても出題あり)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業★、自動車整備業、機械修理業、医療業★、清掃業★ 第一種衛生管理者免許
衛生工学衛生管理者免許
医師
歯科医師
労働衛生コンサルタント
厚生労働大臣の定める者その他の業種 第一種衛生管理者免許
第二種衛生管理者免許
衛生工学衛生管理者免許
医師
歯科医師
労働衛生コンサルタント
厚生労働大臣が定める者また、似たような文言で正誤の違う出題パターンがあります。
注意したい出題パターン
- 衛生管理者は、全て第一種衛生管理者免許を有する者のうちから選任できる
⇒第一種衛生管理者免許所持者は、どの業種でも選任できるので正しい - 衛生管理者は、全て第一種衛生管理者免許を有する者のうちから選任しなければならない
⇒第一種衛生管理者免許所持者以外(医師など)を選任できるので誤り
- 衛生管理者は、全て第一種衛生管理者免許を有する者のうちから選任できる
※該当法令:労働安全衛生法第12条、労働安全衛生法施行令第4条、労働安全衛生法施行規則第7条、労働基準法施行規則第18条
衛生管理者の職務
衛生管理者が職務として行う業務は、総括安全衛生管理者が統括管理する業務のうち、衛生に係る技術的事項です。
衛生管理者が管理すべき業務(衛生に係る技術的事項に限る)
- 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
衛生管理者による定期職場巡視とその結果による応急措置等
衛生管理者は「少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない」と規定されています。
これは、「労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること」の一環として、衛生管理者自ら実施すべき職務に他なりませんが、過去問では独立した選択肢として出ているので要注意です。
- 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
- 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
- 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
- 安全衛生に関する方針の表明に関すること
- 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること
- 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
誤りパターン
ほぼ固定化されています(令和5年後期まで)。
- 労働者の健康を確保するため必要があると認めるとき、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすること(かなり出る)
⇒衛生管理者ではなく産業医の職務です - 衛生推進者の指揮に関すること
⇒衛生管理者の職務として規定されていません - 少なくとも(毎月1回・1月以内ごとに1回)作業場等を巡視し~
⇒少なくとも毎週1回です
※該当法令:労働安全衛生法第10条第1項、第12条第1項、労働安全衛生法施行規則第3条の2、第11条第1項
総括安全衛生管理者の選任と職務
出題形式は、①常時使用労働者数(以下、常時人数)と業種による選任要件、②総括安全衛生管理者の職務等です。
- ①常時人数と業種による選任要件
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衛生管理体制全体の設問でも出題されやすいため必須知識です。常時300人の過去問は、同じ選択肢が繰り返されていますが、今後も同じとは考えないほうがいいでしょう。
★は出題歴あり(衛生管理体制全体の設問を含む)
業種 常時人数 林業★、鉱業、建設業★、運送業★、清掃業★ 100人 製造業★(鉄鋼業としても出題あり)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業★、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業★(百貨店として出題あり)、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業★、旅館業★、ゴルフ場業★、自動車整備業、機械修理業 300人 その他の業種★(医療業、警備業、金融業として出題あり) 1000人 - ②総括安全衛生管理者の職務等
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①と比べて軽視されがちにもかかわらず、該当条文はどれも長くないです。範囲が狭い(学習が容易)ですから、もし出題されて答えられないと間違いなく後悔します。
★は出題歴あり、安衛法=労働安全衛生法、安衛則=労働安全衛生法施行規則
誰を選任? 事業の実施を統括管理する者★
⇒事業の実施を統括管理する者に準ずる者は不可★安衛法第10条 いつまでに? 選任すべき事由が発生した日から14日以内★ 安衛則第2条 選任したら? 遅滞なく、選任報告書を、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない★ 安衛則第2条 職務 - 安全管理者、衛生管理者★などの指揮
- 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること★
- 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること★
- 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること★
- 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
- その他、労働災害を防止するため必要な業務
- 安全衛生に関する方針の表明に関すること★
- 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること★
- 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
安衛法第10条、安衛則第3条の2 旅行・疾病・事故等 代理者を選任しなければならない★ 安衛則第3条 都道府県労働局長 総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができる★ 安衛法第10条
※該当法令:労働安全衛生法第10条、労働安全衛生法施行令第2条、労働安全衛生法施行規則第2条、第3条、第3条の2
衛生工学衛生管理者の選任
衛生工学衛生管理者の選任要件は、正誤どちらの選択肢でもよく出ます。
専任の衛生管理者は、常時500人を超える事業場+有害業務に常時30人以上となりますが、衛生工学衛生管理者の場合は、専任の衛生管理者と従事する人数の要件は同じでも、一定の有害業務のみである(有害業務の全てではない)ところがポイントです。
衛生工学衛生管理者を選任すべき有害業務 |
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多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務 |
ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務 |
土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務 |
異常気圧下における業務 |
鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務 |
なお、これまで衛生工学衛生管理者の選任が不要な有害業務で出題されたのは、
- 多量の低温物体を取り扱う業務(よく出る)
- 強烈な騒音を発する場所における業務
があります(令和5年後期まで)。
※該当法令:労働安全衛生規則第7条、労働基準法施行規則第18条
産業医の選任・職務等
衛生管理体制全体の設問でも出てくるため、産業医だけの設問は多くありません。出題内容は、①産業医の職務、②産業医に関する法令全般です。
- ①産業医の職務
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難易度は低く、出題数が少ないからだと思われますが、誤りパターンは「安全衛生に関する方針の表明に関すること」だけです。これは総括安全衛生管理者の職務となります。それ以外の選択肢は、すべて労働安全衛生法施行規則第14条第1項から出ています。
★は出題歴あり
- 健康診断、面接指導等の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること★
- 作業環境の維持管理に関すること★
- 作業の管理に関すること★
- 上記のほか、労働者の健康管理に関すること
- 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
- 衛生教育に関すること★
- 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること★
- ②産業医に関する法令全般
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出題されると難易度が高いです。分野はバラバラ、選択肢に特徴的な偏りは見当たらず、もっともらしい文章で書かれている誤り選択肢もあります。
以下、過去問で出題された選択肢と誤りパターンです。
事業規模 - 常時50人以上は産業医を選任
- 常時1,000人以上は専属の産業医を選任
- 重量物の取扱い等重激な業務に常時500人は専属の産業医を選任
- 常時3,000人以上(誤:2,000人以上)は産業医を2人以上
誰を選任? 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について一定の要件を備えた医師 いつまでに? 選任すべき事由が発生した日から14日以内(誤:30日以内) 選任不可 事業場においてその事業の実施を統括管理する者 産業医の権限 - 事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告
- 総括安全衛生管理者に対し、労働者に対する衛生教育に関することであって、医学に関する専門的知識を必要とする事項について勧告
- 労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集
- 衛生委員会に対し、労働者の健康を確保する観点から必要な調査審議を請求
作業場等の巡視 - 少なくとも毎月1回(誤:3月に1回)
- 事業者から、毎月1回以上、所定の情報(誤:衛生委員会を開催した都度作成する議事概要)の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、毎月1回以上から2か月に1回以上にできる
情報提供 事業者は、労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるものを提供しなければならない 旅行・疾病・事故等 代理者選任の規定はない(誤:代理者を選任しなければならない) 辞任・解任 事業者は、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない 周知 事業者は、産業医の業務の具体的な内容等を、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付ける等の方法により、労働者に周知させなければならない その他 事業者は、産業医からの勧告内容及び当該勧告を踏まえて講じた措置の内容(措置を講じない場合にあっては、その旨及びその理由)を記録し、これを3年間保存しなければならない
※該当法令:労働安全衛生法第13条、第101条第2項、労働安全衛生法施行規則第14条、第14条の3第2項、第14条の4、第23条第5項
作業主任者の選任
作業主任者の選任問題では、作業内容による選任義務の有無が問われます。そのほとんどは「選任義務がある作業」で問われますが、以前は「選任義務がない作業」も出題されていました。
以下、過去に複数回出題された選択肢をまとめています。出題形式の都合上、選任義務がない選択肢を目にすることが多いです。
注意
令和4年4月1日以降、屋内・屋外問わずアーク溶接の作業には作業主任者を選任しなければなりません。以前の過去問では「屋内作業場におけるアーク溶接の作業」が選任義務のない選択肢になっていますので要注意です。
選任義務がある作業(複数回出題) |
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選任義務がない作業(複数回出題) |
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※該当法令:労働安全衛生法第14条、労働安全衛生法施行令第6条